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ネパール洪水|新たな天然ダム湖はどこ?吉隆口岸上流で形成・3日以内に決壊の危険

ネパール洪水|新たな天然ダム湖はどこ?吉隆口岸上流で形成・3日以内に決壊の危険 ニュースな場所

【8/29追記あり】

2026年8月26日にネパール北部と中国・チベット自治区の国境付近を襲った大規模な洪水・土石流。

その後、上流部では新たな危険が続いています。

中国水利省によると、ネパール側の錯堅河(Chhochen Khola)と普熱普強藏布(Purepu Tsangpo)の合流地点付近に、大規模な天然ダム湖(堰塞湖)が形成されました。

8月27日午前時点の推定貯水量は約200万立方メートル

さらに今後3日間で約300万立方メートルの水が流入すると予測され、中国当局は天然ダムの決壊によって吉隆口岸など下流域が再び被災する危険性を警戒しています。

8月28日には天然ダム湖の水量が250万立方メートルを超え、越流が発生

さらに同日午前、中国軍の無人機が周辺の雪山で新たな雪崩を確認し、初期計測では約5万立方メートルの氷屑が天然ダム湖へ流入したと報じられました。

では、この天然ダム湖は実際にどこまで広がっているのでしょうか。

これまで当サイトでは、8月26日の洪水について、ランタン・リルン北側の高標高域から約4,000mの河谷へ氷や岩石が崩落し、河川をせき止めた可能性をGoogle Earthで検証してきました。

今回はその考察も振り返りながら、CCTVが公開した8月28日午前10時の天然ダム湖全景映像と座標、Google Earthの災害前地形を照合し、天然ダム湖の位置や広がり、吉隆口岸との関係を確認します。

【8月28日夜・最新情報】

天然ダム湖では8月28日に越流が発生したと報じられています。

同日、中国側の無人機は周辺の雪山で新たな雪崩を確認し、初期計測では約5万立方メートルの氷屑が天然ダム湖へ流入したとされています。

一方、Reutersによると、中国側では天然ダム湖の状況を航空測量や3Dモデルなどで評価したうえで、一時停止していた救助活動が再開されています。

そのため現時点では、天然ダム湖全体が大規模に決壊したと断定せず、「越流が発生し、引き続き二次災害の監視が続いている状態」として本記事では整理します。

今後の測量や公式発表によって、貯水量・湖面範囲・堤体の状態などが修正される可能性があります。

※本記事は災害時の避難・安全判断を目的としたものではありません。現地の最新情報については、各国政府・防災当局などの公式情報をご確認ください。

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8月26日から28日までの天然ダム湖を時系列で整理

天然ダム湖をめぐっては、8月26日の洪水発生以降、短時間のうちに状況が大きく変化しています。

■ 8月26日
ネパール北部から中国・チベット自治区との国境付近にかけて、大規模な洪水・土石流が発生。
高標高域で発生した氷河・岩石崩落に伴い、大量の氷、岩石、泥などが河谷を流下したとみられています。


■ 8月27日午前
中国水利省が、錯堅河と普熱普強藏布の合流地点付近に天然ダム湖が形成されたと発表。
推定貯水量は約200万立方メートル
さらに今後3日間で約300万立方メートルの流入が予測されました。


■ 8月28日午前10時ごろ
CCTVが「堰塞湖28日10時全景図」として天然ダム湖の映像を公開。
映像にはN28.335197 / E85.477622との座標表示が確認できます。
この時点の映像では、湖面上部にまだ一定の余裕があるように見えます。


■ 8月28日
天然ダム湖の水量は250万立方メートルを超えたと報じられ、湖から越流が発生。
二次災害リスクから中国側・ネパール側で救助活動が一時中断されました。


■ 8月28日午前・新たな雪崩
吉隆口岸周辺を偵察していた中国軍の無人機が、受災区域付近の雪山で新たな雪崩を確認。
初期計測では、約5万立方メートルの氷屑が天然ダム湖へ流入したとされています。


■ 8月28日午後
中国側では航空測量や3Dモデルによって天然ダム湖のリスクを評価。
一時停止していた吉隆口岸周辺の救助活動は、その後再開されたと報じられています。

※時刻・貯水量・流入量などは8月28日時点で公表・報道されている内容を整理したものです。再測量や追加発表によって今後修正される可能性があります。

ネパール側に新たな天然ダム湖が形成

中国水利省によると、天然ダム湖が確認されたのは、ネパール側を流れる錯堅河(Chhochen Khola)が普熱普強藏布(Purepu Tsangpo)へ合流する地点付近です。

8月27日午前時点で推定された貯水量は約200万立方メートル。

さらに周辺では降雨が続いており、今後3日間で約300万立方メートルの水が流入すると予測されています。

中国水利省は8月27日、西蔵自治区に対して洪水防御Ⅳ級緊急対応を開始。

天然ダムの安定性や貯水量、雨量、水位、流量などを監視するとともに、決壊した場合の洪水シミュレーションを進めています。

特に重要なのは、中国当局が「吉隆口岸など下流沿線が再び被災する可能性」を警戒していることです。

つまり、この天然ダム湖は8月26日に大きな被害を受けた吉隆口岸よりも上流側に位置しています。

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CCTV映像に天然ダム湖の座標「28.335197, 85.477622」

引用CCTV:ネパール洪水後発生の天然ダム湖写真

引用CCTV:ネパール洪水後発生の天然ダム湖写真

8月28日にCCTVが放送した「堰塞湖28日10時全景図」の映像には、

N28.335197 / E85.477622

という座標表示が確認できます。

この座標をGoogle Earth上で確認すると、中国当局が説明している「錯堅河と普熱普強藏布の合流地点付近」という情報だけでは分からなかった、天然ダム湖の実際の広がりが見えてきます。

ただし注意が必要です。

CCTV映像に表示されたN28.335197 / E85.477622が、

  • 天然ダム本体の位置
  • 湖面上の特定地点
  • 映像の観測・測定上の基準点

のどれを示しているのかは、公開映像だけでは確認できません。

そのため本記事では、「CCTVが天然ダム湖全景として公開した映像に表示された座標」として扱います。

CCTV映像とGoogle Earthを比較すると天然ダム湖は谷に沿って広がる

これまでの報道では、天然ダム湖について「錯堅河と普熱普強藏布の合流地点付近に形成された」と説明されていました。

しかしCCTVの全景映像とGoogle Earthの地形を比較すると、天然ダム湖は合流地点付近だけに形成された小さな湖ではなく、狭い河谷に沿って国境方向へ広がっているように見えます。

ネパール洪水 報道による新たな天然ダム湖イメージ

ネパール洪水 報道による新たな天然ダム湖イメージ

※青丸はCCTV映像とGoogle Earthの谷地形を照合し、当サイトが天然ダム湖とみられる範囲を概略的に示したものです。公式に公表された湖岸線ではなく、今後の衛星画像・測量結果などによって修正される可能性があります。

天然ダム湖の場合、河川が塞がれた地点から上流側へ水が貯まるため、湖面は細長い谷に沿って伸びることがあります。

今回の現場も、

「河川の合流地点=天然ダム湖全体の場所」

と単純に捉えるより、

「合流地点周辺で河道が閉塞し、その上流側の谷に湛水域が形成されている可能性」

として見る必要がありそうです。

なお、天然ダム本体となっている河道閉塞部の正確な位置については、現時点の公開資料だけでは断定できません。

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災害前後を比較|谷の植生が失われ大量の堆積物が出現

さらに、Google Earthに残る災害前の地形と、CCTVが8月28日に公開した天然ダム湖の映像を比較すると、景観が大きく変化していることが分かります。

引用CCTV:ネパール洪水後発生の天然ダム湖写真

引用CCTV:ネパール洪水後発生の天然ダム湖写真

青線で示した尾根や斜面の形状を見ると、Google EarthとCCTV映像で同じ場所を比較していることが確認できます。

一方、災害前のGoogle Earth画像では谷沿いに緑色の植生が広がっていますが、8月28日のCCTV映像では、その多くが確認できなくなっています。

GoogleEarth:洪水発生前の天然ダム湖周辺

GoogleEarth:洪水発生前の天然ダム湖周辺

8月26日の大規模な氷岩屑流・土石流などによって、谷沿いの植生が流失した可能性があります。

さらに注目されるのが、画像右側に確認できる巨大な灰色の堆積物(赤い丸の部分)です。

災害前のGoogle Earth画像では、同じ場所にこのような規模の堆積物は確認できません。

地形上は、

高標高域で氷河・岩石崩落

氷・岩石・土砂などが河谷へ流下

大量の物質が谷底へ堆積

河道が狭窄・閉塞

上流側に水が貯まり天然ダム湖が形成

という過程とも整合します。

ただし、赤丸部分の堆積物が8月26日に発生した氷河・岩石崩落の「着地点」そのものなのか、また天然ダム本体を構成する堆積物なのかについては、画像比較だけでは確認できません。

本記事では「8月26日の崩落・土石流などによって形成された堆積域である可能性」として整理します。

天然ダム湖・崩落域・吉隆口岸の位置関係を広域で確認

ここまで天然ダム湖そのものの位置と広がりを確認してきました。

次に視点を広げ、天然ダム湖、これまで検証してきた高標高域の崩落候補、8月26日に被災した吉隆口岸・ラスワガディの位置関係をGoogle Earthで確認します。

天然ダム湖付近は標高約4,000m

Google Mapsの地形表示やGoogle Earthで周辺を確認すると、天然ダム湖が形成されたとみられる河谷は、おおむね標高4,000m前後の高地です。

この標高は、今回の洪水原因について報じられている「高標高域から氷や岩石が崩落した」という情報とも関係してきます。

当サイトでは8月27日までに、ランタン・リルン北側について、

標高約5,200m付近 → 約4,000mの河谷

という大きな標高差が存在することを確認していました。

これは、報道された「約5,200m付近から約1,200m落下した」という条件ともおおむね一致します。

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当初は「国境から北東約20km」を手掛かりに発生源を検証

ここで、これまでの記事で行ってきた検証についても整理しておきます。

災害直後の報道では、洪水の発生源について、

「ラスワガディ国境から北東約20km」「Lhende Khola上流」

などの情報が伝えられていました。

そこで当サイトではGoogle Earthを使い、国境から北東方向の高標高域を確認。

標高約4,000mの河谷と、その周囲にある標高5,000~5,200m級の斜面を複数比較しました。

その段階では崩落地点を特定できる情報が少なかったため、複数の谷筋を候補として検証しています。

その後、衛星画像解析などから、ランタン・リルン北側の氷河・岩石崩落が今回の洪水の発端となった可能性が具体的に指摘されるようになりました。

つまり、

災害直後
「国境から北東約20km」「Lhende Khola上流」を手掛かりに複数の谷を検証

 

その後
衛星画像などからランタン・リルン北側の高標高域が有力候補として浮上

 

8月27~28日
その下流側に天然ダム湖が確認され、水量が増加

 

8月28日
CCTVが天然ダム湖の全景映像を公開し、座標表示も確認

 

同日
天然ダム湖で越流が発生し、新たな雪崩による約5万立方メートルの氷屑流入も確認

という形で、災害発生後に少しずつ地理的な情報が明らかになってきています。

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現在の天然ダム湖は8月26日の土石流で形成された?

中国側は、8月26日の災害によって運ばれた大量の泥や岩石などが河谷を塞ぎ、天然ダム湖が形成されたとしています。

つまり現在の天然ダム湖は、もともと存在していた湖ではなく、今回の災害によって河道が閉塞したことで形成された湖とみられます。

ここで一つ大きな疑問が生じます。

8月26日の巨大洪水そのものも、天然ダムの形成・決壊と関係していたのではないか?

という点です。

今回の災害については、氷河・岩石崩落に伴う大量の水・氷・土砂が洪水を発生させたとみられています。

一方、崩落物が河川を一時的に塞いだ可能性なども指摘されています。

もし8月26日に一時的な河道閉塞が生じていたとすると、

「8月26日の洪水に関係した河道閉塞」と「現在存在している天然ダム湖」はどのような関係なのか

という疑問が出てきます。

一度決壊した天然ダムが再び形成されることはある?

天然ダムが「決壊」したからといって、河川を塞いでいた岩石や土砂がすべて消失するとは限りません。

大量の岩石・土砂などで形成された天然ダムでは、水が堤体を越えて流れ始めると、その流れによって堤体が徐々に侵食されることがあります。

一部が削られて大量の水が流出しても、堆積物の一部が河谷に残る場合があります。

さらに後続する土砂や岩石が流れ込めば、再び河道が狭くなったり、水が貯留したりする可能性もあります。

天然ダム湖の一般的な水の動きを模式図にすると、次のようになります。

天然ダム湖の貯留・越流・決壊の仕組みを示した模式図

※天然ダム湖の一般的な仕組みを簡略化した模式図です。今回のネパール洪水で実際に起きた過程を再現したものではありません。

簡略化すると、

上流からの流入量

湖に貯留される水量の増加分

下流への流出量

という水収支で考えることができます。

天然ダム形成直後は、上流から流れてきた水の多くが湖に貯留されるため、下流の河川流量が大きく減少する場合があります。

その後、水位が上昇して天然ダムの上端まで達すると、

流入 → 貯水 → 越流 → 下流へ流出

という状態になります。

さらに越流水によって堤体の侵食が進めば、天然ダムの一部または大部分が崩れ、短時間に大量の水が下流へ流出する危険があります。

天然ダム湖の模式図は何を根拠に作成した?

今回掲載した天然ダム湖のイラストは、今回のネパール洪水の現場を再現したものではなく、天然ダム(河道閉塞)が形成されてから、貯水・越流・決壊へ進む一般的な仕組みを分かりやすく整理した模式図です。

天然ダムは、地すべりや崩落などによって大量の土砂・岩石が河川を塞ぐことで形成されます。

河道が塞がれると上流から流れてきた水が天然ダムの上流側に貯まり、天然ダム湖が形成されます。

その後も流入が続けば湖面が上昇し、堤体の高さに達すると水が天然ダムを越える「越流」が始まります。

越流したからといって直ちに天然ダム全体が決壊するわけではありませんが、越流水によって堤体の侵食が進むと、天然ダムが大きく崩れて貯留されていた水が短時間に下流へ流出する危険があります。

USGSの天然ダム研究でも、天然ダムの破壊では越流が代表的な要因として整理されています。

模式図で示した基本的な流れ

 

河道が土砂・岩石で閉塞

上流側に水が貯留

天然ダム湖の水位が上昇

堤体上部から越流

越流水によって堤体が侵食される場合がある

侵食が進むと決壊し、大量の水が下流へ流出する危険

なお、天然ダムの形状や構成物、流入量などによって実際の経過は異なります。

そのため、本記事の模式図は天然ダム湖で起こり得る一般的な水の動きを説明するためのもので、今回のネパール洪水で「この順序どおりに現象が発生した」と示すものではありません。

参考資料

  • 国土交通省 近畿地方整備局「紀伊山地における大規模河道閉塞(天然ダム)対策の考え方(案)」
  • 国土交通省「河川砂防技術基準」
  • U.S. Geological Survey / Costa, J.E. & Schuster, R.L.「The formation and failure of natural dams」

8月28日午前10時の天然ダム湖はまだ余裕があるように見える

引用CCTV:ネパール洪水後発生の天然ダム湖写真

引用CCTV:ネパール洪水後発生の天然ダム湖写真

CCTVが公開した8月28日午前10時の天然ダム湖全景映像を見ると、湖面と周囲の堆積物との間には、まだ一定の高低差があるように見えます。

しかし、その後同日中に天然ダム湖から越流が始まったと報じられました。

Reutersによると、天然ダム湖の水量は250万立方メートルを超えたとされています。

前日の推定値が約150万~200万立方メートルだったことを考えると、短期間に貯水量が増加したことになります。

ただし、午前10時の映像撮影から越流までに湖面が何メートル上昇したのか、また何立方メートルの水が新たに流入したのかについて、詳細な測量値は確認できていません。

そのため、

「午前10時以降も流入が続き、湖面がさらに上昇した可能性が高い」

という範囲で整理します。

8月28日、新たな雪崩で5万立方メートルの氷屑が天然ダム湖へ流入

8月28日には、天然ダム湖周辺で新たな雪崩も確認されました。

吉隆口岸周辺の被災地域を偵察していた西部戦区空軍の無人機が、受災区域付近の雪山で雪崩を確認。

中国側の初期計測では、約5万立方メートルの氷屑が天然ダム湖へ流入したとされています。

China pulse 🇨🇳 (@Eng_china5) on X
Chinese military drones detected an avalanche near Gyirong Port, with an estimated 50,000 cubic meters of ice debris entering a barrier lake. The footage was t...

この5万立方メートルという数字については注意が必要です。

天然ダム湖の250万立方メートル超は湖に貯留されている水量を示す一方、今回の5万立方メートルは雪崩によって流入した氷屑などの体積です。

したがって、

250万立方メートル+5万立方メートル=255万立方メートル

と単純に足し算することはできません。

一方で、大量の氷や岩屑が湖へ流入した場合には、湖水を押しのけたり、波を発生させたりする可能性があります。

天然ダム湖では、このような追加の崩落や雪崩も二次災害のリスク要因となります。

ただし、今回確認された約5万立方メートルの氷屑流入が、同日の越流を直接引き起こしたのかは確認されていません。

河川からの継続的な流入、降雨、融雪など複数の要因が関係している可能性があります。

また、この8月28日の雪崩が、8月26日の大規模災害を引き起こした最初の氷河・岩石崩落地点と同じ場所なのかについても、現時点では確認できていません。

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8月28日、天然ダム湖では越流が発生

8月28日には、この天然ダム湖で越流が発生したことが報じられました。

Reutersによると、天然ダム湖の水量は250万立方メートルを超えたとされ、一時は二次災害への警戒から救助活動が停止されました。

その後、中国側では航空測量や3Dモデルなどを用いて天然ダム湖の状態を評価。

リスクが管理可能と判断されたとして、一時中断していた救助活動が再開されたと報じられています。

ただし、これは天然ダム湖が完全に安定したことを意味するものではありません。

周辺では降雨が続く予報があり、さらに8月28日には新たな雪崩と氷屑流入も確認されています。

ここで「越流」と「決壊」は分けて考える必要があります。

越流
湖面が天然ダムの上端まで上昇し、水が堤体を越えて下流へ流れ始める状態。

 

決壊
越流水などによって天然ダム本体の侵食・崩壊が進み、貯留されていた大量の水が短時間に流出する状態。

8月28日現在、一部では「天然ダムが決壊した」とする表現もみられます。

一方、中国側では天然ダム湖の状態を引き続き監視しており、さらなる山体崩壊や雪崩などの二次災害リスクも警戒されています。

そのため本記事では、現時点の状況を「越流が発生したが、天然ダム全体が大規模に決壊したことは確認できていない状態」として整理します。

【8月28日追記】一方で「決壊リスクは徐々に低下」との情報も

一方、8月28日17時35分にAFPが配信した記事では、中国国営メディアが天然ダム湖の決壊リスクについて「徐々に低下している」と伝えたことが報じられています。

CCTVによると、天然ダム湖からは水が自然に流れ出しており、流出量が流入量を上回っているとされています。

また、8月27日早朝の高い水位と比較すると、湖面は約10メートル低下したと報じられました。

ただしAFPは、中国側がリスク低下を伝えている天然ダム湖と、ネパール当局が同日に「決壊した」と警告した天然ダム湖が同一のものかどうかは現時点では明らかになっていないとしています。

そのため、天然ダム湖をめぐる情報には一部不明な点が残っており、今後の公式発表を確認する必要があります。

天然ダムが大きく決壊すると吉隆口岸へ再び洪水が向かう可能性

中国水利省が警戒しているのが、天然ダム湖から大量の水が一気に流出した場合の下流への影響です。

天然ダム湖は吉隆口岸より上流側にあります。

そのため大規模な決壊が起きれば、放出された水は河谷を下流へ流れ、8月26日に大きな被害を受けた吉隆口岸・熱索村周辺などへ再び洪水が向かう可能性があります。

中国当局も、天然ダム湖の状態について、

  • 上流からの流入量
  • 下流への流出量
  • 天然ダム本体の安定性
  • 周辺の降雨
  • 山体崩壊や雪崩
  • 今後の洪水到達範囲

などを監視・解析しています。

「8月26日の天然ダム」と「現在の天然ダム湖」は同じなのか

現時点で最も気になるのが、この点です。

8月26日の大洪水については、

氷・岩石崩落 → 大量の水・氷・土砂が河谷へ流下 → 洪水・土石流

という大きな流れが明らかになってきています。

一方、その過程で河道が一時的に閉塞した可能性も指摘されています。

現在、その下流域では実際に大規模な天然ダム湖が確認されています。

そのため、

① 8月26日に形成された河道閉塞の一部が現在も残っている

② 8月26日の洪水後に残った大量の堆積物によって再び水が貯まり始めた

③ 8月26日の最初の河道閉塞とは別の場所に天然ダム湖が形成された

など、複数の可能性が考えられます。

ただし現時点では、8月26日の最初の河道閉塞地点と、現在確認されている天然ダム湖が同一地点なのかは確認されていません。

ここは今後公開される衛星画像や現地調査結果を待つ必要があります。

当サイトの見解

これまでGoogle Earthで検証してきた標高約5,200mの崩落候補域、その下にある約4,000mの河谷、そして現在確認されている天然ダム湖の位置には、地形上のつながりがみられます。

さらにCCTVが8月28日に公開した全景映像をGoogle Earthの災害前地形と比較すると、谷沿いの植生が大きく失われ、災害前には存在しなかった大量の堆積物が確認できます。

こうした状況は、8月26日に大量の氷・岩石・土砂などがこの河谷を通過・堆積した可能性と整合します。

一方で、地形・映像比較だけから、8月26日の崩落経路、最初の河道閉塞地点、天然ダム本体の正確な位置を特定することはできません。

本記事では、報道・公的機関・CCTV映像によって確認できる情報と、Google Earthによる地形上の考察を分けて掲載しています。

まとめ|天然ダム湖は越流・新たな雪崩による氷屑流入も確認

今回確認された情報を整理します。

  • 8月26日、ネパール・中国国境付近で大規模な洪水・土石流が発生
  • その後、錯堅河と普熱普強藏布の合流地点付近に天然ダム湖が形成
  • 8月27日午前時点の推定貯水量は約200万立方メートル
  • 今後3日間で約300万立方メートルの流入が予測された
  • 8月28日午前10時のCCTV映像には「N28.335197 E85.477622」との座標表示が確認できる
  • CCTV映像とGoogle Earthを比較すると、天然ダム湖は河川合流地点付近だけでなく谷に沿って広がっているように見える
  • 災害前後の比較では、谷沿いの植生消失と大規模な堆積物が確認できる
  • 8月28日には天然ダム湖の水量が250万立方メートルを超え、越流が発生
  • 同日、新たな雪崩が発生し、約5万立方メートルの氷屑が天然ダム湖へ流入した
  • 約5万立方メートルの氷屑流入が越流の直接原因となったかは確認されていない
  • 一時中断されていた中国側の救助活動は、天然ダム湖のリスク評価後に再開された
  • 8月26日の最初の河道閉塞と現在の天然ダム湖との詳しい関係はまだ明らかになっていない

天然ダム湖をめぐる状況は現在も変化しています。

わずか1日の間にも、

午前10時の全景映像 → 貯水量250万立方メートル超 → 越流 → 新たな雪崩による約5万立方メートルの氷屑流入

と、新しい情報が相次いでいます。

今後は、天然ダム湖の水位が低下するのか、越流が継続するのか、天然ダム本体の侵食が進むのか、さらに新たな雪崩・山体崩壊が発生するのかが焦点となります。

また、8月26日に発生した最初の洪水と現在の天然ダム湖がどのようにつながっているのかについても、衛星画像や現地調査によって新たな情報が判明する可能性があります。

当サイトでも、確認された事実とGoogle Earthによる地形上の考察を分けながら、続報が確認され次第追記します。

※本記事は2026年8月28日時点の中国水利省、CCTV、中国側報道、Reutersなどの公開情報をもとに整理しています。災害状況は現在も変化しており、天然ダム湖の貯水量・湖面範囲・越流状況・堤体の状態・座標などは、今後の再測量や公式発表によって修正される可能性があります。Google Earthを用いた地形分析、湖面範囲、堆積域などの記述は公開映像と地形を照合した当サイトによる考察を含み、天然ダム本体、崩落地点、河道閉塞地点、決壊地点を公式に特定するものではありません。避難や安全判断については、必ず現地政府・防災当局などの最新情報をご確認ください。

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