2026年9月、北海道十勝地方の幕別町を流れる川で、秋サケを密漁しているとみられる8人ほどの姿がドローンによって撮影されました。
映像が撮影されたのは9月9日。
報道によると、およそ2時間の間に30匹から50匹ものサケを捕ったとみられ、一部ではメスの腹から卵を取り出したあと、魚体を川へ捨てる様子も確認されたといいます。
では、この映像が撮影された場所はどこなのでしょうか。
報道映像に映る川岸の形や道路、周囲の地形をGoogleマップ・Google Earthと照合していくと、現場とみられる場所が見えてきました。
さらに周辺を調べると、そこは単にサケが遡上する川というだけではありませんでした。
撮影場所とみられる地点から、直線距離でわずか約500m上流には「猿別川鮭捕獲場」があります。
この記事のポイント
・密漁とみられる行為が撮影された場所を報道映像から検証
・現場は幕別町を流れる猿別川の下流部とみられる
・すぐ下流には十勝川との合流部
・約500m上流には「猿別川鮭捕獲場」
・日本生まれのシロザケは北太平洋を数年にわたって回遊する
秋サケ密漁の場所はどこ?幕別町の猿別川を調査
HTB北海道ニュースは、今回の現場について「幕別町を流れる川」と報じています。
そこで、ドローン映像に映っている河岸の形状や護岸、河川敷の道路などをGoogle Earthで確認しました。
その結果、映像と地形的な特徴がよく一致する場所が、幕別町を流れる猿別川の下流部にありました。
場所は、猿別川が十勝川へ合流する地点から少し上流側です。
報道映像では、川沿いに続く護岸、その背後の平坦な河川敷、車が通れる道などが確認できます。
Google Earthで同じ場所を見ると、こうした地形や道路の配置が確認できます。
なお、報道機関や北海道が撮影地点の詳細な座標まで公表しているわけではありません。
そのため本記事では、報道映像と公開されている地図・航空画像を照合した結果として紹介しています。
現場は十勝川から猿別川へ入ったすぐ上流
今回の場所を広い範囲から見ると、さらに位置関係が分かりやすくなります。
猿別川は幕別町を流れ、下流で十勝川へ合流します。
海から遡上してきたサケが猿別川へ向かう場合、まず十勝川を上り、そこから猿別川へ入ることになります。
上の地図では、太平洋側から十勝川をさかのぼり、さらに猿別川へ入っていく位置関係が確認できます。
今回の撮影地点とみられる場所は、その猿別川のかなり下流側に位置しています。
数年にわたる長い旅の末、捕獲場までわずか500m手前で
今回、周辺を調べていて特に気になったのが、撮影地点とサケの捕獲施設との距離です。
Googleマップで確認すると、撮影地点とみられる場所から直線距離で約500m上流に、「猿別川鮭捕獲場」があります。
※約500mはGoogleマップ上で確認した直線距離です。河川に沿った実際の遡上距離とは異なります。
つまり、今回密漁とみられる行為が撮影された場所は、十勝川から猿別川へ入ったサケが、上流の捕獲場へ向かう途中にあたる区間です。
もちろん、映像に映った人たちがサケの遡上経路や捕獲場との位置関係を認識したうえで、この場所を選んだのかどうかは分かっていません。
ただ、地図上で見ると、撮影場所のすぐ上流にサケの捕獲施設があるという位置関係は確認できます。
サケは北太平洋を数年にわたって回遊して日本へ戻る
ここで、秋サケがどのような一生を送っているのかを見てみます。
日本生まれのシロザケは、川から海へ下ったあと、そのまま日本近海だけで生活するわけではありません。
水産研究・教育機構の研究では、日本系を含むアジア起源のサケ・マス類の幼魚は、降海後、夏から秋にかけてオホーツク海へ回遊することが確認されています。
その後、日本系シロザケは北太平洋を広く回遊しながら成長し、成熟すると再び日本へ戻ってきます。
上の図は、日本系シロザケについて知られている一般的な回遊を分かりやすく示したものです。
個々のサケが必ず同じ海域を同じ順序で通るという意味ではありませんが、その生活圏がオホーツク海から北太平洋、ベーリング海など非常に広い範囲に及ぶことが分かっています。
そうして数年を海で過ごしたサケが成熟し、再び北海道沿岸へ戻ってきます。
太平洋から十勝川へ、さらに猿別川を遡上
北太平洋を回遊したサケが十勝地方へ戻ってきたあとも、旅は終わりではありません。
太平洋から十勝川へ入り、さらに川をさかのぼります。
そして猿別川へ入ったサケは、上流方向へ遡上していきます。
今回作成した広域地図を見ると、海から猿別川鮭捕獲場付近までにも、かなりの距離があることが分かります。
その長い経路の最後、捕獲場まで直線距離で約500mという場所で、今回の密漁とみられる行為が撮影されていました。
秋サケの人工ふ化放流は漁業者らが支えている
北海道では、秋サケ資源を持続的に利用するため、漁業者などが経費を負担しながら人工ふ化放流事業を行っています。
川へ戻ってきた親魚を確保し、採卵・受精、ふ化、飼育を経て、次の世代となる稚魚を再び川から海へ送り出す取り組みです。
一度放流すればすぐに成果が出るものではありません。
海へ下った稚魚が成長し、数年後に親魚となって戻ってくるまでには長い時間がかかります。
HTBの取材に対し、道漁業取締船「ほくと」の内村嘉幸船長は、今年は価格上昇の恐れもあり、ふ化場にとっても漁業者にとっても「死活問題」だとして、さまざまな人の生活がかかっていることを訴えています。
また、十勝釧路管内さけ・ます増殖事業協会は9月25日、警察に取り締まり強化を求める要望書を提出すると報じられています。
北海道では9月と10月を「秋さけ密漁防止月間」に
北海道では、毎年9月1日から10月31日までを「秋さけ密漁防止月間」としています。
北海道によると、河川などの内水面や、採捕が禁止されている河口付近の海面では、サケ・マスを採捕することは禁止されています。
道は取締機関や民間団体などと連携し、巡回パトロールや指導・取り締まりを行っています。
今回の映像も、北海道の漁業取締関係者によるドローン監視によって撮影されたものです。
まとめ|密漁撮影場所の約500m上流に猿別川鮭捕獲場
今回、幕別町で撮影された秋サケの密漁とみられる映像について、周辺の地形を確認しました。
報道映像とGoogle Earthなどを照合すると、撮影地点とみられる場所は十勝川との合流地点に近い猿別川下流部にあります。
そして、その場所から直線距離で約500m上流には「猿別川鮭捕獲場」があります。
日本生まれのシロザケは、海へ下ったあと北太平洋を広く回遊し、数年をかけて日本へ戻ってきます。
十勝へ戻ったサケはさらに十勝川をさかのぼり、猿別川へ。
今回の現場は、その長い回遊と遡上の先にある場所でした。
秋サケをめぐっては、漁業者や増殖事業に携わる人たちが、親魚の確保から採卵、ふ化、稚魚の放流まで、次の世代へつなぐ取り組みを続けています。
そのすぐそばで今回の行為が確認されたという位置関係も含め、今後の捜査や取り締まりの動きを見守りたいと思います。







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