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印旛沼の水深は?堤防の高さ・予備排水の仕組みを地図で調査

印旛沼の水深と堤防の断面・予備排水の仕組みを調査したイメージ ニュースな場所
印旛沼の水深・堤防の断面・予備排水の仕組みを調査

2026年9月22日、台風25号による大雨で、千葉県の北印旛沼と角川の2か所で堤防が決壊しました。

今回のニュースを調べるなかで、ひとつ気になったことがあります。

そもそも印旛沼はどれくらい深いのでしょうか。そして、沼を囲む堤防は周囲の土地と比べてどのような高さになっているのでしょうか。

さらに調べていくと、印旛沼は普段から水位が管理され、大雨が予想される場合には、雨が降る前から水を外へ出す「予備排水」という運用が行われていることが分かりました。

この記事では、国土地理院の地図や湖沼データ、水資源機構の資料をもとに、「堤防の断面」「水深」「予備排水」の3つから印旛沼の仕組みを見ていきます。

この記事のポイント
・今回決壊した2か所の周辺で、北印旛沼を横断する断面を地理院地図で確認
・北印旛沼の基準水面は標高1.46m
・国土地理院による北印旛沼の深度は最大4.8m
・湖水深図では1m前後~1m台の水深が示されている場所も広く確認できる
・大雨の前には「予備排水」であらかじめ水位を下げる
・台風25号では予備排水を行っても水位が大幅に上昇した

なお、今回の堤防決壊地点そのものについては、航空写真やGoogle Earthを使って別の記事で詳しく調べています。

▼ 北印旛沼周辺の2か所の決壊地点はこちら

印旛沼の堤防決壊場所はどこ?北印旛沼東岸を航空写真と地図で調査

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印旛沼の堤防はどれくらい高い?決壊地点周辺の断面を確認

まず、今回堤防が決壊した場所の周辺が、横から見るとどのような地形になっているのか、国土地理院の「地理院地図」で確認してみました。

今回確認するのは、決壊地点そのものの堤防高を測定することではありません。

北印旛沼とその周囲の低地、そして堤防がどのような高さ関係になっているのかを把握するため、2つの決壊地点それぞれの周辺で任意の断面を取っています。

北印旛沼・船形干拓の決壊地点周辺を断面で確認

まず、北印旛沼の堤防が決壊した成田市船形干拓周辺です。

決壊地点周辺を通るように北印旛沼を横断する任意の線を引き、地理院地図で断面を表示したものが下の画像です。


北印旛沼の船形干拓決壊地点周辺の堤防と地形の断面図 国土地理院

※今回の北印旛沼・船形干拓の決壊地点周辺で、地理院地図を使って任意の断面を確認したものです。両岸には堤防による高まりが確認できます。表示される5.1mは任意地点のDEM標高値で、決壊地点そのものの堤防高を測定したものではありません。また、水面部分のDEM標高も実際の観測水位を示すものではありません。

断面を見ると、沼の両側に堤防による高まりがあり、その外側には低い土地が広がっている場所があることが分かります。

角川・成田市下方の決壊地点周辺も断面で確認

もう1か所は、北印旛沼へ流入する農業排水路「角川」の成田市下方周辺です。

こちらについても、決壊地点周辺の地形が分かるように任意の断面を取って確認しました。


角川の成田市下方決壊地点周辺と北印旛沼の地形断面図 国土地理院

※角川・成田市下方の決壊地点周辺で、地理院地図を使って任意の断面を確認したものです。表示される4.8mは選択地点のDEM標高値であり、「今回決壊した堤防の高さが4.8mだった」ことを示すものではありません。

この2枚の断面図で注目したいのは、5.1mや4.8mという細かな数字そのものではありません。

今回決壊した2か所の周辺には、沼や水路を囲む堤防による高まりがあり、その周囲には低い土地が広がっているという地形の関係です。

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印旛沼の水深は?国土地理院の湖沼データを確認

では、堤防の内側にある印旛沼はどれくらい深いのでしょうか。

国土地理院では、通常の地形図とは別に「湖水深」のデータを公開しています。


北印旛沼の水深 国土地理院湖水深データ

北印旛沼を見ると、中央付近には1.6mの表示があり、岸に近い場所では0.75m、1.0m、1.25mなどの等深線が確認できます。

今回の2つの決壊地点周辺を見ても、湖水深図には0.75m、1.0m、1.25mなどの等深線が確認できます。

ただし、これは決壊地点そのものの水深を測定したものではなく、国土地理院が公開している湖水深データから周辺の水深分布を確認したものです。

一方、国土地理院の「調査実施湖沼一覧」では、北印旛沼について次のように記載されています。

項目 北印旛沼
基準水面 1.46m
深度 最大4.8m
測量年 1992年・1993年
湖沼データ作成年 2019年

ここで注意したいのは、「最大4.8m=印旛沼全体が4.8mの深さ」ではないことです。

湖水深図を見ると、北印旛沼には1m前後~1m台の水深が示されている場所が広く確認できます。

一方、国土地理院の「調査実施湖沼一覧」では、北印旛沼の深度は4.8mとされています。

つまり、地図上で確認できる1m前後~1m台という水深と、一覧表に記載された4.8mという深度は分けて考える必要があります。

また、北印旛沼の湖底地形データは1990年代に測量されたものです。現在の湖底地形と完全に同じとは限らない点にも注意が必要です。

なぜ印旛沼の周りには低い土地がある?

地図を見ると、印旛沼の周囲には田畑などの低い土地が広がっています。

ここを理解するうえで重要なのが「干拓」です。

干拓は、湖を土で埋めて土地を作る「埋め立て」とは異なります。

もともと水があった浅い場所を堤防で囲み、中の水を排出することで、湖底だった場所を陸地として利用できるようにします。

そのため、干拓地では現在の印旛沼の水面より低い土地が存在することになります。

印旛沼の周辺に堤防があり、その外側に低い田畑が広がっている理由を考えるうえでも、この干拓の歴史は重要です。

印旛沼に締切堤防を築き湖岸側を排水して干拓地にする仕組みを示した模式図

印旛沼の干拓の仕組みを示した模式図。国土地理院の湖沼データ、農林水産省・水資源機構の印旛沼干拓事業に関する資料などを参考に、当サイトが独自に構成しAIを使用して作成。地形や堤防の位置・高さ・水深などを正確な縮尺で再現したものではありません。

印旛沼は「調整池」として水位を管理している

現在の印旛沼は、ただ自然に水がたまっている沼ではありません。

北印旛沼と西印旛沼は、水資源機構によって水位が管理され、洪水調節や農業用水、水道用水などに利用されています。

そして、大雨が予想されるときには、印旛沼にこれから流れ込んでくる水を受け入れられるよう、事前に水位を下げることがあります。

これが「予備排水」です。

予備排水とは?「コップの水」で考えると分かりやすい

予備排水の仕組みは、コップにたとえると非常に分かりやすくなります。

コップに雨水を入れる前に、コップの水を少し捨てて空きを作っておくようなものです。

印旛沼でも、大雨が予想される場合には、雨が本格的に降る前から水を外へ出し、これから流れ込む雨水を受け止めるための「空き」を作ります。


印旛沼の予備排水の仕組み コップに例えたイラスト

※約4,500万m³は台風前の予備排水だけの量ではなく、9月17日の予備排水開始から9月22日22時までの累計排水量です。大雨が降った後の排水も含まれます。

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台風25号では3日前から予備排水を開始

今回の台風25号でも、印旛沼では事前の対策が行われていました。

水資源機構の資料によると、9月17日19時40分から予備排水を開始。

雨が本格化する前の9月20日7時にはY.P.+2.03mとなり、この時期の通常水位Y.P.+2.30mから約27cm低い状態まで水位を下げていました。

日時・目安 水位など 何をしていた?・何が起きた?
普段(9月) Y.P.+2.30m前後 普段はこのくらいの水位になるよう管理
9月17日 19:40 ― 予備排水を開始。雨の前から沼の水を外へ出し始める
9月20日 7:00 Y.P.+2.03m 通常より約27cm水位を下げ、雨水を受け入れる空きを確保
大雨が続く 水位が急上昇 周囲の河川などから大量の水が流入し、排水を継続
計画上の水位 Y.P.+4.25m 計画高水位(H.W.L.)
9月22日 4:00 Y.P.+4.93m 沼平均水位が最高値に
9月22日 4:30ごろ Y.P.+5.04m 観測地点の水位として最高値を記録
9月22日 22時まで 累計約4,500万m³を排水 予備排水開始後の累計。大雨後の排水も含む

※Y.P.(Yedogawa Peil)は、利根川・江戸川などの河川工事で使われる高さの基準です。Y.P.0mは東京湾平均海面を基準とするT.P.0mより約84cm低い位置にあります。

事前に27cm下げても、計画高水位を大きく超えた

今回の経過で特に注目したいのは、何も対策をしないまま水位が上昇したわけではないという点です。

台風が来る前から予備排水を行い、通常より約27cm低いY.P.+2.03mまで水位を下げていました。

それでも大雨によって周囲の河川などから大量の水が流れ込み、9月22日4時には沼平均水位がY.P.+4.93mまで上昇しました。

これは計画高水位Y.P.+4.25mを大きく上回ります。

さらに、報道された観測地点では4時30分ごろにY.P.+5.04mを記録しました。

「沼平均水位4.93m」と「観測地点5.04m」は測っている対象が異なるため、同じ地点の水位が4.93mから5.04mへ上昇した、という意味ではありません。

印旛沼から出した水はどこへ行く?

印旛沼には、水を外へ排出する大きく2つの方向があります。

北印旛沼からは利根川方向へ。

さらに西印旛沼側からは、大和田機場などを通じて新川・花見川を経由し、東京湾方向へ排水する仕組みがあります。

つまり印旛沼は、大雨の水をただ「ためる」だけではなく、流れ込んでくる水を受け入れながら、外へ排水して水位を管理する巨大なシステムになっています。

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まとめ|断面・水深・予備排水を見ると印旛沼の仕組みが分かる

今回、印旛沼について国土地理院の断面図や湖水深データ、水資源機構の資料を確認しました。

今回決壊した2か所の周辺で地形の断面を確認すると、沼や水路を囲む堤防による高まりと、その周囲に広がる低い土地との関係が見えてきます。

また、国土地理院の湖水深図では、北印旛沼に1m前後~1m台の水深が示されている場所が広く確認できる一方、「調査実施湖沼一覧」では深度4.8mとされています。

さらに印旛沼は水位が管理され、大雨が予想されるときには「予備排水」によって、あらかじめ水位を下げています。

今回の台風25号でも、9月17日から予備排水を始め、雨が本格化する前には通常より約27cm低い水位まで下げていました。

それでも大量の水が流れ込み、9月22日には計画高水位を大きく上回りました。

今回の災害を考えるうえでは、決壊した場所だけでなく、「印旛沼がどのような地形で、普段どのように水位を管理しているのか」を知ることも重要だと感じます。

実際に堤防が決壊した2か所については、航空写真とGoogle Earthを使って詳しく確認しています。

▼ 台風25号・印旛沼の堤防決壊地点を詳しく見る

※本記事は国土地理院、水資源機構、千葉県などの公表資料をもとに作成しています。地理院地図の断面図は、今回決壊した2か所の周辺で任意に設定した地点のDEM標高を表示したものであり、決壊地点そのものの堤防高を測定したものではありません。

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