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小惑星「Daianji」を高校生がどうやって発見?COIASの仕組みと藤井衣織さん【深掘り調査】

高校生がCOIASを使って小惑星Daianjiを発見した方法のイメージ 感動・ストーリー
高校生は小惑星「Daianji」をどうやって発見した?COIASによる小惑星探索をイメージした水彩画

岡山市の高校2年生が発見に関わった小惑星に、母校の名前から「Daianji(ダイアンジ)」という名前が付けられました。

発見に関わったのは、岡山県立岡山大安寺中等教育学校5年生の藤井衣織さんです。

「高校生が小惑星を発見」と聞いて、まず気になったのがどうやって見つけたのかということでした。

自宅に大きな天体望遠鏡があるのでしょうか。

毎晩、同じ場所の空を観測していたのでしょうか。

調べてみると、そうではありません。

藤井さんが使っていたのは「COIAS(コイアス)」というウェブアプリでした。

しかもこのCOIAS、特別な研究者だけが使えるものではなく、一般の人でも無料で利用できます。

では、高校生がパソコンを使って、どのように2億km以上離れた小惑星を見つけるところまでたどり着いたのでしょうか。

藤井さんが小惑星を探し始めた時期、COIASの仕組み、観測した場所、母校「大安寺」の場所や学校の仕組み、そして小惑星に名前が付くまでを順番に調べてみます。

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高校2年生が発見した小惑星「Daianji」とは?

COIAS公式サイトでは、2026年9月7日、COIASで発見された小惑星(865364)Daianji(ダイアンジ)と命名されたことが発表されています。

岡山大安寺中等教育学校も、5年生の藤井衣織さんが「新小惑星を発見した一人」となり、その小惑星がDaianjiと命名されたと発表しています。

つまり、藤井さん一人だけによる単独発見ということではありません。

OHK岡山放送によると、藤井さんはCOIAS上で同じ天体を観測していた人たちとともに、この小惑星を発見しました。

小惑星は地球から約2億6000万km離れ、火星と木星の間を公転していると報じられています。

小惑星「Daianji」

名称:Daianji(ダイアンジ)
確定番号:(865364)
発見:COIASによる探索
命名発表:2026年9月7日
名前の由来:岡山県立岡山大安寺中等教育学校

 

高校生がどうやって小惑星を発見した?使ったのは「COIAS」

高校生が小惑星を発見したと聞くと、大きな天体望遠鏡をのぞきながら夜空を観測している姿を想像してしまいます。

ところが藤井さんが使っていたCOIASは天体望遠鏡ではありません。

正式名称は「Come On! Impacting ASteroids」。小惑星などの未発見天体を、研究者と一般市民・学生が協力して探すために開発されたウェブアプリです。

そしてCOIASで使われているのが、ハワイ・マウナケアにあるすばる望遠鏡などによって撮影された天体画像です。

つまり藤井さん自身が望遠鏡をハワイへ向けて観測していたわけではありません。

すばる望遠鏡が撮影した画像を、岡山にいる藤井さんがパソコン上で調べていたということになります。

 

すばる望遠鏡があるマウナケアはどこ?

すばる望遠鏡は、ハワイ島のマウナケア山頂にあります。

口径8.2mの大型望遠鏡で、COIASでは超広視野主焦点カメラ「Hyper Suprime-Cam(HSC)」などで取得された画像データを使って小惑星を探します。

※地図はマウナケア天文台群周辺を示しています。

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COIASではどうやって小惑星を見つける?

では、パソコンの画面を見ているだけで、どうやって小惑星を見つけるのでしょうか。

ここがCOIASの面白いところです。

COIASでは、同じ天域を異なる時刻に撮影した複数の画像を使います。

画像をパラパラ漫画のように順番に切り替えていくと、遠くにある恒星などはほぼ同じ場所に見えます。

ところが太陽の周りを動いている小惑星は、時間が経つと少し位置が変わります。

この方法を「ブリンク」と呼びます。

上の図のように、背景の星はほとんど動かないのに、一つだけ少しずつ位置を変えている点があれば、移動天体の候補になります。

ただし、実際の画像はこの図ほど分かりやすくありません。

OHKの取材に答えたライフパーク倉敷科学センターの学芸員も、画像の中からわずかに動く天体を見つけるのはかなり大変で、ある程度の天文学の知識も必要だと説明しています。

「無料アプリだから簡単に小惑星を発見できる」という話ではないようです。

 

同じ場所を何年間も定点観測していた?

もう一つ気になったのが、藤井さんが同じ場所の宇宙を何年間も観測して、たまたまDaianjiを見つけたのかということです。

COIASの仕組みを見ると、少し違います。

COIASでは、すばる望遠鏡などが過去に撮影した大量の画像データから天域を選び、その中に写っている移動天体を探していきます。

一つの天域については時間の違う画像を比較しますが、同じ一点だけを何年間も見続けるという観測方法ではありません。

COIASで使われる画像には、観測した天域を示す「tract」、さらにその領域を細かく分ける「patch」、観測時刻に対応する「visit」といった情報があります。

いろいろな天域の画像を調べながら、その中から動く天体を探していくわけです。

イメージすると

すばる望遠鏡が宇宙を撮影

大量の画像が保存される

COIASで天域を選ぶ

同じ天域の時間差画像を比較

動いている天体を探す

未知の天体ならMPCへ報告

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藤井衣織さんは何年間、小惑星を探していた?

では藤井さんは、どのくらいの期間、小惑星を探していたのでしょうか。

ここは公表されている情報に少し違いがあります。

岡山大安寺中等教育学校によると、藤井さんは「2年生の頃からCOIASを用いて小惑星を探しはじめた」とされています。

藤井さんは現在5年生です。

そのため学校の説明をそのまま読むと、中学2年生相当のころから現在の高校2年生相当まで、小惑星探しに取り組んできたことになります。

一方、OHK岡山放送は、藤井さんが2年前にライフパーク倉敷科学センターでCOIASを学ぶワークショップに参加したことをきっかけに、パソコン上での天体観測を始めたと報じています。

学校が説明する「2年生の頃」と、OHKが報じる「2年前のワークショップ」は時期が完全には一致しません。

そのため、ワークショップがCOIASとの最初の出会いだったのか、それ以前からCOIASを使っていてワークショップをきっかけに本格的な観測へ進んだのかまでは、現在確認できる情報だけでは分かりません。

ただ、少なくとも高校2年生になって初めて小惑星探しを始め、すぐにDaianjiを発見したという話ではなさそうです。

 

2年間で観測した小惑星は1万個以上

OHKによると、藤井さんは2年間で1万個以上の小惑星を観測していました。

1万個という数字を見ると、今回の発見までにかなりの数の天体を見てきたことが分かります。

そして「1万個の小惑星を観測した」というのは、1万カ所の空を観測したという意味ではありません。

一つの天域にも複数の小惑星が写っていることがあり、COIASでは既に知られている小惑星も含めて測定し、そのデータを小惑星の軌道改良などに役立てることができます。

 

COIASは誰でも使える?料金や年齢制限は?

ここまで読んでいると、今度は「自分でもCOIASを使えるのか?が気になります。

COIAS公式FAQでは、「どなたでも利用できる」と案内されています。

利用料金も無料です。

無料の会員登録を行い、メールアドレスをログインIDとして使用します。

また、公式FAQや利用案内を確認した限り、「18歳以上」「13歳以上」といった年齢制限は示されていません。

COIAS自体が、研究者だけでなく一般市民や学生も未発見天体を探索できるように開発されたアプリです。

項目 COIAS
料金 無料
利用者 一般市民・学生も利用可能
年齢制限 公式案内では特定の年齢制限を確認できず
自分の望遠鏡 不要
使用端末 パソコン推奨(スマートフォン非対応)
専門知識 専門知識がなくても利用可能

ただし、「誰でも利用できる」と「誰でも簡単に新しい小惑星を発見できる」は別です。

COIAS公式も、すべての画像に未発見天体が写っているわけではなく、COIASを使えば必ず発見できるものではないと説明しています。

COIASはスマホでは使えない?

COIASはWebブラウザ上で動くアプリですが、スマートフォンには対応していません。

「WebアプリならスマホのChromeでも使えるのでは?」と思いましたが、COIASはパソコンの画面を前提として作られており、スマートフォンの画面幅に合わせて表示を最適化するレスポンシブ表示には対応していません。

そのためスマートフォンでは画面の表示が崩れることがあり、小惑星を探すCOIAS本体を正常に利用することができません。

タブレットも同様で、COIAS公式ではパソコンからの利用を案内しています。

また、小惑星探しでは星が多数写った画像の中からわずかに動く天体を確認するため、そもそも大きな画面の方が作業には向いています。

COIASを使う端末

パソコン:〇
スマートフォン:×
タブレット:×
専用スマホアプリ:なし
利用方法:パソコンのWebブラウザからアクセス

 

藤井さんがCOIASを学んだライフパーク倉敷科学センターはどこ?

藤井さんが約2年前にCOIASのワークショップへ参加したと報じられているのが、ライフパーク倉敷科学センターです。

学校は岡山市、科学センターは倉敷市にあります。


岡山大安寺中等教育学校とライフパーク倉敷科学センターの位置関係

岡山大安寺中等教育学校とライフパーク倉敷科学センターの位置関係(Googleマップをもとに作成)

藤井さんが通う学校と、COIASを学んだワークショップ会場の位置関係はこのようになっています。

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藤井衣織さんが通う岡山大安寺中等教育学校はどこ?

そして、小惑星の名前にもなった岡山県立岡山大安寺中等教育学校は、岡山市北区北長瀬本町にあります。

住所は岡山県岡山市北区北長瀬本町19番34号です。

 

「中等教育学校5年生」は中学生?高校生?

ニュースを読んでいて少し分かりにくいのが、「岡山大安寺中等教育学校5年生」という表記です。

5年生と聞くと、小学生のようにも見えます。

中等教育学校は、中学校3年間と高校3年間に相当する教育を6年間一体で行う中高一貫校です。

前半の1~3年生が中学校に相当する前期課程、4~6年生が高校に相当する後期課程になります。

中等教育学校の学年

1年生 → 中学1年生相当
2年生 → 中学2年生相当
3年生 → 中学3年生相当
4年生 → 高校1年生相当
5年生 → 高校2年生相当
6年生 → 高校3年生相当

つまり藤井さんは現在、一般的な高校でいう高校2年生に相当します。

また「義務教育学校」とも違います。

義務教育学校は小学校から中学校までに相当する9年間を一体で行う学校ですが、中等教育学校は中学校から高校までに相当する6年間の学校です。

岡山大安寺中等教育学校は2010年4月に開校した、岡山県で最初の中等教育学校です。

 

岡山大安寺中等教育学校に天文部はある?

小惑星を発見した高校生が通う学校と聞いて、「天文部の活動なのでは?とも思いました。

ところが学校が公開している現在の部活動を見る限り、「天文部」という名称の部活動は確認できません。

学校にはサイエンス部がありますが、公開されている情報だけでは、今回の藤井さんの小惑星探索がサイエンス部の活動として行われたものなのかは確認できませんでした。

そのため、藤井さんが天文部に所属して小惑星を発見した、という話ではなさそうです。

少なくとも現在確認できる情報では、COIASを使った藤井さん自身の継続的な観測活動として紹介されています。

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藤井衣織さんは囲碁でも全国大会へ

藤井さんについて調べていて、もう一つ意外な活動が見つかりました。

囲碁です。

2025年6月に行われた第49回全国高校囲碁選手権大会岡山県大会では、大安寺の女子団体メンバーとして出場。

大安寺は女子団体で優勝し、藤井さん自身も女子個人戦で2位に入りました。

その結果、団体・個人とも全国大会への出場を決めています。

当時の報道では藤井さんは「大安寺1年」と紹介されています。中等教育学校では4年生が高校1年生相当ですが、高校囲碁大会では高校の学年に合わせた表記が使われているものとみられます。

小惑星の観測だけに取り組んでいる生徒というより、学校生活の中で囲碁にも取り組み、全国大会まで進んでいたことになります。

 

なぜ小惑星を「Daianji」と名付けた?

では、なぜ小惑星にDaianjiという名前を付けたのでしょうか。

由来はもちろん、藤井さんが通う岡山大安寺中等教育学校です。

藤井さんはOHKの取材に、学校が好きで、Daianjiと名付けることで天体に興味を持つ人が増えれば、という趣旨を話しています。

ところが調べてみると、この「大安寺」という学校名にもさらに由来があります。

 

学校名「大安寺」の由来は奈良の大安寺までさかのぼる

岡山大安寺中等教育学校によると、この地域はかつて奈良にある大和大安寺の寺領「大安寺の荘」だったことから「大安寺」と名付けられたとされています。

岡山市も、大安寺という地名について、奈良時代に大安寺がこの地域で土地を開発し、その後、土地所有者だった大安寺にちなみ地域や村の名前が付いたと説明しています。

つまり今回の名前をたどると、

小惑星「Daianji」

岡山大安寺中等教育学校

岡山の「大安寺」という地名

奈良の大安寺の寺領「大安寺の荘」

というところまでつながります。

高校生が母校への思いから付けた小惑星の名前ですが、その名前自体にはかなり古い歴史がありました。

 

小惑星は見つけたらすぐ名前を付けられる?

もう一つ疑問があります。

COIASで動く点を見つけたら、すぐに好きな名前を付けられるのでしょうか。

もちろん、そうではありません。

COIASで測定された未知の天体の情報は、太陽系小天体の情報を管理するMPC(Minor Planet Center/小惑星センター)へ報告されます。

複数日の観測などによって未発見天体として認められると仮符号が付きます。

さらに長期間の観測によって軌道が十分に確定すると確定番号が付けられ、そこまで進んで初めて命名を提案できる段階になります。

COIAS公式では、報告から命名まで4~10年以上かかることがあると説明しています。

今回のDaianjiにも「865364」という確定番号が付いています。

小惑星に名前が付くまで

画像の中で未知の移動天体を発見

位置などを測定

MPCへ報告

複数日の観測などで確認

仮符号

長期間の観測で軌道を確定

確定番号

名称を提案

承認されれば正式名称

ですから今回のニュースは、藤井さんが2026年に突然小惑星を見つけ、その場で「Daianji」と名付けたというものではありません。

COIASで見つかった天体が長い確認の過程を経て、ようやく名前を持つところまで来たことになります。

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高校生のパソコンとハワイの望遠鏡がつながった小惑星発見

今回のニュースを最初に見たとき、一番気になったのは「高校生がどうやって小惑星を見つけたのか」というところでした。

調べてみると、自分の天体望遠鏡で毎晩同じ場所を観測していたわけではありません。

ハワイのすばる望遠鏡などが撮影した大量の画像をCOIASで調べ、時間の違う画像を比較しながら動く天体を探していました。

COIASは無料で、一般の人や学生も利用できます。

しかし藤井さんは2年間で1万個以上の小惑星を観測しており、今回の発見が単に「無料アプリを触ったら偶然見つかった」というものでもないことが分かります。

幼いころ父親と行ったプラネタリウムで宇宙に興味を持ち、中学生のころにはCOIASを使って小惑星を探し、科学センターのワークショップにも参加。

そして高校2年生相当となった現在、自分が発見に関わった小惑星に、母校からDaianjiという名前が付きました。

宇宙の観測というと、研究者や巨大な施設だけの世界のようにも思えます。

ところが今回の話を見ると、ハワイで撮影された画像と岡山にいる高校生のパソコンがつながり、その測定結果が国際的な小惑星の観測につながっています。

藤井さんが話している「宇宙は遠い場所だけど、誰でも貢献できることがある」という言葉の意味が、COIASの仕組みを調べるとよく分かるニュースでした。

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