映画『風の谷のナウシカ』の主な舞台の1つ、腐海(森)。
そ腐海に生える植物は猛毒を排出するため、腐海の中は猛毒の空気で満たされこの世界で住む人々にとって忌み嫌われている存在です。
しかし実は森の役割は、かつて人々が文明の発展の代償として汚染した大地を浄化していることだったのです。
森の木々から吐き出される毒は大地が浄化されている証。
宮崎駿監督による漫画版『風の谷のナウシカ』では、映画では描かれなかった「腐海の尽きるところ」が登場します。
そこは毒に汚染された世界とはまったく異なる、清浄な水と大地、植物や生き物が存在する場所でした。
では、この「青き清浄の地」は原作世界のどこにあるのでしょうか。
漫画版には世界の地図も掲載されています。
今回は原作の地図を広げながら、「腐海の尽きるところ」がどこにあるのか、作中から分かることを整理してみます。
この記事の結論
原作には世界の地図が描かれていますが、「腐海の尽きるところ(青き清浄の地)」がどこにあるのかは分かりません。
ただし原作を読み進めると、この場所についていくつか重要なことが分かります。
・実在する場所として描かれている
・最も古く腐海が生まれた場所である
・すでに大地の浄化が終わっている
・森の人はその存在を知っていた
・過去に何人もの森の人が向かったものの、誰一人戻らなかった
つまり「存在するか分からない幻の土地」ではありません。
存在することは分かっている。しかし、その位置も距離も原作では明示されていない。
これが「腐海の尽きるところ」の興味深い点です。
まず原作に描かれた世界地図を広げてみる
漫画版『風の谷のナウシカ』には、物語の舞台となる地域を描いた地図があります。
※「酸の湖」=映画のクライマックスの舞台となる場所です
風の谷をはじめ、トルメキア、土鬼諸侯国、腐海など、物語に登場する地域の位置関係を確認することができます。
ところが、この地図を眺めても「腐海の尽きるところ」や「青き清浄の地」という場所は記載されていません。
原作を読めば、その場所が存在すること自体は分かります。
それなのに地図上では位置を確認できないのです。
ここで一つ疑問が浮かびます。
そもそも、この地図はナウシカたちの世界全体を描いた「世界全図」なのでしょうか。
原作地図は「人々が知ることのできる世界」の地図なのか
地図を見ると、物語の中心となる国々や腐海が描かれています。
しかし、地図の外側にも世界が続いていると考えるのが自然です。
ナウシカたちの時代には、巨大産業文明が崩壊した「火の七日間」から約1000年が経過しています。
文明は大きく衰退し、さらに世界の広い範囲を腐海が覆っています。
腐海は瘴気に満ちており、防瘴マスクなしでは人間は長時間生きることができません。
巨大な蟲も生息しています。
つまり通常の人々が腐海の奥深くへ入り、自由に調査して地図を作ることは極めて難しい世界です。
そう考えると、原作に掲載されている地図について、もう一つの見方もできます。
この地図こそが、この時代の人々が把握できる世界の限界なのかもしれません。
もちろん、原作の中で「この地図は人類が把握している範囲だけを描いたもの」と説明されているわけではありません。
そのため、これはあくまで地図と世界設定から考えられる一つの可能性です。
ただ、腐海の奥深くまで自由に進めない人々が暮らす世界であることを考えると、地図に描かれていない土地が存在していても不思議ではありません。
例外的に腐海の奥深くを知る「森の人」
ただし、腐海の中を深く知る人々も存在します。
セルムをはじめとする「森の人」です。
森の人は腐海の奥深くで暮らし、一般の人々とは異なる形で腐海と共存しています。
そして彼らは「腐海の尽きるところ」が存在することも知っていました。
原作ではセルムによって、ナウシカ自身がその場所へ導かれます。(※ANIMAGE COMICS 風の谷のナウシカ 第6巻 87ページ)
※生身の状態ではなく、魂のような状態で導かれます。ナウシカ自身深い眠りにいました。
ナウシカが見た「腐海の尽きるところ」
セルムに導かれたナウシカが目にしたのは、それまで彼女が知っていた世界とはまったく異なる光景でした。
そこには腐海の瘴気に覆われた世界ではなく、清浄な水や大地、草木、生き物が存在しています。
いわゆる「青き清浄の地」です。
そしてセルムは、この場所について非常に重要なことをナウシカに伝えます。
ここは、最も古く腐海が生まれた場所だというのです。
最も古い腐海では、すでに浄化が終わっていた
腐海は永遠に存在し続ける森ではありません。
汚染された大地から毒を取り込み、それを長い時間をかけて浄化していきます。
そして最も古く腐海が発生した場所では、その役割を終えた森が尽き、清浄な土地が現れていました。
原作では、そこまで大地が浄化されるのにおよそ1000年という非常に長い時間が必要だったことも語られています。
ただし、ここで注意したい点があります。
ナウシカが訪れた時点から1000年前に浄化が終わった、という意味ではありません。
その土地で浄化がいつ完了したのか、そして清浄な土地になってから何年が経過しているのかまでは分かりません。
「青き清浄の地」はどこにある?
では、本題です。
最も古く腐海が生まれ、すでに浄化を終えているこの場所は、原作地図のどこにあるのでしょうか。
残念ながら、その答えは原作からは分かりません。
地図には広大な腐海が描かれていますが、「ここが最古の腐海」という地点は示されていません。
セルムもナウシカに、その場所の方角や距離を説明しているわけではありません。
さらにナウシカは、風の谷などから飛行具に乗ってこの場所へ向かったわけでもありません。
セルムに導かれる特殊な形で「腐海の尽きるところ」を見ることになります。
そのためナウシカの移動経路から場所を逆算することもできません。
では「腐海の尽きるところ」はどのくらい遠い?
場所が分からないとなると、次に気になるのが距離です。
風の谷やトルメキア、土鬼諸侯国など、物語の中心となった地域から数百km離れているのでしょうか。
それとも1000km、2000km、あるいはさらに遠いのでしょうか。
これについても、原作には具体的な距離の記述がありません。
つまり「どこにあるのか」だけでなく、「どのくらい遠いのか」さえ分からないのです。
しかし、距離を考えるうえで興味深いエピソードがあります。
森の人は何人も「腐海の尽きるところ」へ向かっていた
森の人にとって「腐海の尽きるところ」は、まったく知られていない場所ではありませんでした。
原作終盤では、森の人たちが過去に何人もの人間をその地へ送り込んでいたことが明らかになります。
しかし、送り込まれた者は誰一人として戻ってきませんでした。(※ANIMAGE COMICS 風の谷のナウシカ 第7巻 128ページ)
後に明らかになる世界の真実を踏まえると、その理由は「青き清浄の地」の環境そのものにあったと考えられます。
清浄すぎる空気の中ではナウシカたちは生きられない
漫画版終盤では、ナウシカたち現在の人類そのものについて衝撃的な事実が明らかになります。
ナウシカたちの身体は、汚染された世界の環境に適応しています。
そのため大地の浄化が完全に終わった「青き清浄の地」の汚染の無い甘くて強い空気には、強く汚染した空気に慣れたナウシカ達の体には耐えることができません。つまり汚染した空気で生きるために体の組成が変わってしまっていたのです。(※ANIMAGE COMICS 風の谷のナウシカ 第7巻 129ページ)
森の人が何人も腐海の尽きるところへ向かったにもかかわらず帰ってこなかったのも、彼らがそこで命を落としたためと考えられています。(※ANIMAGE COMICS 風の谷のナウシカ 第7巻 128ページ)
つまり森の人にとってさえ、「腐海の尽きるところ」は簡単に調査できる土地ではなかったことになります。
地図に「青き清浄の地」がないのは不思議ではない
ここでもう一度、原作の地図に戻ってみます。
地図に「青き清浄の地」が描かれていない理由について、原作は説明していません。
しかし、ここまでの情報を並べてみると興味深いことが分かります。
通常の人々は、そもそも腐海の奥深くを自由に移動することが難しい。
腐海に精通している森の人でさえ、その尽きるところへ送り込んだ人間を帰還させることができなかった。
そしてナウシカ自身も、通常の旅によってその場所へ到達したわけではありません。
だとすれば、ナウシカたちの時代の人々が「腐海の向こう側」まで正確な地理情報を持っていなかったとしても不思議ではありません。
原作地図の外側に青き清浄の地があるのか。
それとも地図に描かれた巨大な腐海の内部に、すでに浄化を終えた地域が存在するのか。
原作から、その答えを決めることはできません。
「腐海の尽きるところ」は実在する。しかし場所は分からない
最後に整理します。
漫画版『風の谷のナウシカ』で描かれた「腐海の尽きるところ」は、単なる伝説や象徴として語られている場所ではありません。
セルムに導かれたナウシカは、実際にその光景を目にします。
そこは最も古く腐海が生まれ、長い時間をかけて大地の浄化を終えた「青き清浄の地」でした。
しかし原作地図には、その位置が記されていません。
方角も距離も明示されていません。
そして、その土地がいつ浄化を終えたのかも分かりません。
原作地図を広げれば「ここではないか」と場所を探したくなります。
しかし地図を眺めれば眺めるほど、むしろ「この地図に描かれている範囲こそ、ナウシカたちの時代の人々が知ることのできた世界なのではないか」という別の疑問が浮かんできます。
映画版では地下の清浄な砂と水を発見したところまでしか描かれなかった腐海の浄化。
漫画版では、そのはるか先に「腐海そのものが消えた世界」まで描かれていました。
そして皮肉なことに、その美しい世界は、ナウシカたちにとってそのままでは生きることのできない世界でもあったのです。


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