台風24号による記録的な大雨の影響で、鹿児島県・屋久島では山岳部へ向かう道路の通行止めが続いています。
特に影響が大きいのが、屋久島を代表する観光地「縄文杉」です。
縄文杉へ向かう荒川登山口へのアクセスができない状況が続くなか、代わりの登山先として注目されているのが、屋久島南部にある「モッチョム岳」です。
しかし、モッチョム岳は単に「縄文杉へ行けないときの代わりに登れる山」というわけではありません。
標高は940mですが、急こう配が続き、登山には十分な体力や装備が必要とされる山です。
さらに注目したいのが、登山道の途中から屋久島の世界自然遺産地域へ入っていくことです。
なぜ縄文杉へ行けなくなった観光客がモッチョム岳を目指しているのでしょうか。
この記事では、縄文杉へ向かう道路の通行止め状況とモッチョム岳の場所、世界自然遺産との関係、そして標高940mでも容易な山ではない理由を地図と地形から確認します。
【この記事の要点】
・大雨による土砂崩れなどで縄文杉へ向かう荒川登山口へのアクセスができない状況が続いている
・その影響で、別の登山先としてモッチョム岳を訪れる人が増えている
・モッチョム岳は屋久島南部にある標高940mの山
・登山道の途中から屋久島の世界自然遺産地域に入る
・標高だけを見ると高山ではないが、登山口からの高低差は729m
・急こう配やロープ場などがあり、環境省の登山道難易度は「D」
・縄文杉の代替として気軽に選べる登山コースではない
縄文杉へ行けない 荒川登山口への道路で通行止め
台風24号による大雨の影響で、屋久島では山岳部へ向かうアクセス道路の一部で通行止めが続いています。
屋久島観光協会によると、縄文杉へ向かう荒川登山口をはじめ、淀川登山口や白谷雲水峡からの入山ができない状況となっています。
縄文杉登山で利用される荒川登山口へ向かう道路でも土砂崩れなどが発生し、シャトルバスの運休が続いています。
荒川登山口へ向かう道路と通行止め区間の位置関係
MBC南日本放送によると、縄文杉登山のシャトルバスを週40本以上運行している事業者では、9月4日以降の運休によって300万円以上の損失が出ているといいます。
秋の観光シーズンを前に、影響は登山者だけでなく屋久島の観光事業にも広がっています。
縄文杉へ行けない人が「モッチョム岳」へ 場所はどこ?
縄文杉など主要な観光地へ行けないなか、普段は訪れる人が比較的少ない別の山を目指す人が増えています。
その一つとして挙げられているのがモッチョム岳(本富岳)です。
モッチョム岳は屋久島南部に位置し、標高は940m。
原集落や尾之間集落方面から望むことができ、山頂部に巨大な花崗岩が突き出した特徴的な姿をしています。
縄文杉・荒川登山口とモッチョム岳の位置関係
地図で見ると、縄文杉・荒川登山口とモッチョム岳は同じ登山ルート上にあるわけではありません。
縄文杉へ向かうルートとは別系統の、屋久島南部から登る山です。
登山口は千尋滝展望台駐車場付近にあります。
なぜモッチョム岳を目指す? 山の上は世界自然遺産地域
今回、モッチョム岳を目指す人が増えている背景を考えるうえで重要なのが、屋久島の世界自然遺産地域との関係です。
MBC南日本放送の取材に対し、環境省の国立公園管理官は、モッチョム岳について山の上が世界遺産エリアに入り、そこを目指す人が多いという趣旨の説明をしています。
屋久島の世界自然遺産というと「縄文杉」をイメージする人も多いかもしれません。
しかし、世界遺産に登録されているのは縄文杉という一本の木だけではありません。
屋久島では、中央山岳部を中心とした広い森林・山岳地域が「屋久島」世界自然遺産地域として登録されています。
その価値の一つが、海岸付近から山岳部へ標高が上がるにつれて植生が変化していく、屋久島特有の森林生態系です。
モッチョム岳は登山道の途中から世界遺産地域へ
モッチョム岳については、登山口からすべてが世界自然遺産地域というわけではありません。
登山道を進んだ途中から世界自然遺産の保護地域に入ります。
公式の世界遺産区域図を見ると、屋久島中央部の広大な登録地域から南方向へ区域が伸び、モッチョム岳へ通じる山稜部が世界遺産地域に含まれています。
屋久島世界自然遺産地域とモッチョム岳周辺の位置関係
ただし、公開されている公式資料から「登山道の標高○m・この地点から世界遺産」と座標単位で断定することは難しいため、境界については「登山道の途中から世界自然遺産地域に入る」と理解するのが適切です。
つまり、縄文杉へ行けない状況のなかでも、モッチョム岳では屋久島が世界自然遺産に登録された自然環境そのものを体感できることになります。
これが、モッチョム岳が代替の登山先として注目される理由の一つと考えられます。
モッチョム岳は標高940mでも容易な山ではない
一方で注意したいのが、モッチョム岳の「940m」という標高だけを見て登山の難しさを判断できないことです。
屋久島町によると、モッチョム岳は、
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 標高 | 940m |
| 登山口 | 千尋滝展望台モッチョム岳登山口 |
| 距離 | 片道約3km |
| 高低差 | 729m |
| 所要時間 | 往復6~7時間程度 |
とされています。
屋久島町自身も、モッチョム岳について「急こう配が続く難関」と案内しています。
3Dで見ると山が一気に立ち上がっている
Google Mapsの3D表示でモッチョム岳を海岸側から確認すると、その特徴がよく分かります。
千尋滝展望台側から見たモッチョム岳周辺の3D地形
海岸に近い地域から山地が大きく立ち上がり、モッチョム岳周辺には急な斜面が広がっています。
標高940mという数字だけでは分かりにくい、屋久島南部特有の山地の険しさを確認できます。
断面図で確認 登山口から短い距離で大きく標高を上げる
さらに国土地理院の標高データを使い、モッチョム岳登山口付近から山頂方向への地形断面を確認しました。
国土地理院の標高データから確認したモッチョム岳方向の地形断面
登山口周辺から山頂方向へ、比較的短い水平距離のなかで大きく標高を上げていることが分かります。
屋久島町が公開している登山ルート資料では、
千尋駐車場:約250m
↓
万代杉:約800m
↓
神山展望台:約979m
↓
モッチョム岳:約940m
という行程です。
興味深いのは、モッチョム岳山頂の940mよりも、その手前にある神山展望台の方が標高が高いことです。
つまり、単純に登山口から山頂まで登り続けるだけではなく、神山展望台付近まで高度を上げたあと、いったん下ってから再びモッチョム岳山頂へ向かう区間があります。
標高940mという数字だけでは、実際の登山負荷を判断しにくい理由の一つです。
環境省の難易度は「D」 ロープ場もある
環境省の屋久島世界遺産センターでは、モッチョム岳往復ルートを難易度「D」に分類しています。
難易度Dは、登山道が不明瞭な場所があり、道迷いのリスクがやや高く、地図を読む能力や悪天候時に行動を変更する判断能力などが必要とされるレベルです。
モッチョム岳ルートにはロープ場もあり、環境省は十分な登山装備と体力が必要としています。
過去に環境省の職員が現地を巡視した記録でも、登山口から神山展望台まで急な登りが続き、両手も使って登るような場所があることが紹介されています。
そのため、「縄文杉へ行けないから代わりにモッチョム岳へ」と、観光の延長で安易に選ぶのは注意が必要です。
環境省「慣れていない人はガイド利用や登山中止も検討を」
縄文杉などへ行けないことでモッチョム岳を目指す人が増えている状況を受け、環境省も注意を呼びかけています。
MBC南日本放送によると、環境省の国立公園管理官は、登山に慣れていない人についてツアーガイドを利用することや、登るのをやめることも検討してほしいと呼びかけています。
縄文杉への道路が通行止めになったことで、これまで予定していなかった山へ向かう観光客もいるとみられます。
しかし、モッチョム岳は縄文杉観光の単純な代替コースではありません。
世界自然遺産地域へ入ることのできる魅力的な登山ルートである一方、十分な装備・体力・登山経験を考慮して判断する必要があります。
まとめ
台風24号による大雨の影響で、屋久島では縄文杉へ向かう荒川登山口などへのアクセスができない状況が続いています。
そのなかで別の登山先として注目されているのが、屋久島南部のモッチョム岳です。
モッチョム岳は標高940mで、登山道の途中から屋久島の世界自然遺産地域へ入ります。
縄文杉へ行けなくても、屋久島が世界自然遺産として評価された森林・山岳環境に触れられる場所であることが、現在モッチョム岳を目指す人が増えている背景の一つと考えられます。
一方、登山口からの高低差は729mあり、急こう配やロープ場もあります。
国土地理院の断面図やGoogle Mapsの3D地形から見ても、標高940mという数字だけでは登山の難しさを判断できない山であることが分かります。
縄文杉へ行けない場合でも、モッチョム岳を「代わりの観光地」として安易に選ぶのではなく、最新の登山道情報を確認し、自身の経験や体力に応じてガイド利用などを検討することが重要です。
※道路・登山道の状況は2026年9月時点の情報です。復旧状況や入山可否は変わる可能性があるため、屋久島町、屋久島観光協会、環境省などの最新情報をご確認ください。








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